T-1 WORLD CUP » 2006 » 6月




座談会「優勝するのは、どれだ!?」中編

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お待たせしました!

『Casa BRUTUS』副編集長・西田善太さん、
『宣伝会議』編集長の田中里沙さん、そして
『Pingmag』編集長、ウレシカさんによる
T-1特別座談会の中編をお届けします。

3人のスペシャリストが見る、「東京のデザイン」とは?

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── 今回のT-1には、世界13カ国から
デザイナーが参加しているのですが、
いわゆる「東京のデザイン」というものについて、
みなさん、どう感じていますか?
田中 日本の広告に関していうと、
今年、NYのクリオ賞を日本の企業が受賞したり、
そんな動きが、すこしずつ、出てきました。
傾向からいいますと、
派手ではなく、細かなワザを効かせた広告が、
海外から注目されてきていますね。
『宣伝会議』の編集部にも
オランダやスウェーデンなどから、
日本のクリエイターと会う場を作ってほしい、
という依頼が来たりもしています。

飛び込み営業的なので、
そこまで世界に日本の情報が伝わっているのかーと
驚くとともに、嬉しくなります。

西田 建築に限っていえば、
丹下健三さんや磯崎新さんをはじめ、
昔から海外に出ていってますので、
いま、日本がとくに注目されている、
というわけではありません。
でも、その後、安藤忠雄さんのように
商業建築からキャリアを積んだ人たちが出てきて‥‥。
そしていまは、30代から60代までの建築家が
渾然一体となって、争い、協力しあっている状況。

ですから、建築家を参加者に選んだのは、
おもしろい試みだと思いましたね。
── ふだんは立体物を作っている建築家が
Tシャツという2次元のキャンバスに
どんなデザインを描くのか、
僕らも、すごく楽しみにしていました。
西田 それに加えて、いまは、たとえば
佐藤可士和さんをはじめ
おもに2次元の分野で活躍されていたかたが
建築の方面にまで、活動の場を広げようとしている。
デザイン分野間の境界線が、
曖昧になってきているんじゃないかなぁ。
田中 領域を超えて活躍する人が注目され、
支持されていますよね。
西田 デザインに関わる人たちにとって、
活躍する場所の線引きが、薄れてきている。
とくに90年代以降、専門家以外の人たちが
グラフィックをしたり、本をつくったり‥‥
そういうことができるようになった点が、
東京のおもしろいところだと思います。
── なるほど。
西田 逆にいうと、以前は
たとえばグラフィックなら
グラフィックデザイナーだけのものだったのに、
いまは、そうではなくなっているという
厳しさもあります。
たとえば、プロダクトデザイナーが
Tシャツをデザインするなんて、
10年前には考えられなかったし、
たとえ作ったとしても、
誰も見向きもしなかったと思います。
それを束ねるメディアも、なかった。
── 確かに、そうかもしれませんね。
西田 いろんな背景を持つ人たちが、
ただ、「Tシャツ」というルールのもとで闘う‥‥。
だから「Tシャツ」なんだ、とも言えますよね。
誰にも有利じゃないですからね、これは。
田中 そうそう。
西田 しかも、見ている側の職業や年齢、
そして国籍さえもさまざまだから、
SMAPの広告作ったと言っても、
全体には、通用しない。
佐藤可士和という名前でさえ、
ほとんど関係ないところが、すごい。
田中 去年は、「みんなが着たくなるTシャツ」
というテーマでしたから、
作る側も、「みんな、何が着たいんだろう」
という気持ちから入ったように思います。
でも今回は、より「デザイナー魂」を感じるというか、
一方で「こういうTシャツが、かっこいいんだよ」
「こういうTシャツを、着てほしいんだ」という思いと、
他方で「とはいえ、選んでほしいな」みたいな、
その葛藤があるだろうと思うんですね。
── はい。
田中 ですから、今回のT-1には
そうした部分に折り合いをつけたところで
みなさん、かたちにしたのかな、
という感想を持っています。
だから、よけいに難しい感じもするのですが、
見ている側はいろいろ想像(妄想)できて、
楽しいですよね。
可士和さん、今回こうなのか、とか
箭内さん、こう来たかー、みたいな。
意外な感じを受けたTシャツも、ありましたね。
── 箭内さんのTシャツ、意外でしたか?
田中 はい、けっこう意外でした。
西田 これ、どういう意味なんですか?
── 「オレココT」という名前で‥‥。
西田 あ、心臓のところに、日本の地図。
── それに加えて、
海外へ行った時に、あなたの国は?
と聞いて、指さしてもらおう、という。
西田 なるほど。それだったら、
国境線が変わるたびごとに
作り直してほしいですよね。
田中 そうですね(笑)。
西田 あ、これ3年前のTシャツだねってわかる。
この国、いまないじゃん、みたいに(笑)。
田中 秋山具義さん青木克憲さん
サッカーが大好きだから、
応援する気持ちまんまんで、
こんなビジュアルにしたのかなー。
── ジャパンブルーを出してきたのは、
大橋歩さんだけでした。
田中 逆に、他の日本人デザイナーが
出さなかったのって、意外ですよね。
── 白地のTシャツが多いことついては、
何か理由がありそうですか?
西田 うーん、勝負に出るとなると、
白だったりするんじゃないかな?
青木(淳)さんなんか、
もしかしたら、考えてたかもね。
いろいろなTシャツが出てくるだろうから、
結局いちばん目立つのは白なんじゃないかって。
── サイラスさんのイラスト、
これって、衛星に乗ってる‥‥。
デザインといっしょに届いたメッセージには
「Happy Ending」と入っていたのですが、
これはどんな意味なんでしょうか?
ウレシカ これはNASAのデザインですね。
サッカーフィールドがあり、
その中にアダムとイブがいて、
ボールがいくつか転がっていて、
「Happy Ending」。
これって、試合が終わったところで
ハッピーエンディング、
という意味なんじゃないでしょうか?
── ああー、なるほど!
そう言われて見れば、そう見える!
西田 だったら、
サッカーボールを持っててほしかったね。
そうしたら、わかるよ。
一同 ははははは。
── ウレシカさんが、インタビューを通じて
個人的に面識のあるかたというと‥‥。
ウレシカ ステファン・サグマイスターさん
深澤直人さん、カム・タンさん、
オーデッド・エーザさん、
エリック・シュピーカーマンさん‥‥。
あ、もちろん、
トム・ヴィンセントさんも(笑)。
── ナンド・コスタさんなんかも‥‥?
ウレシカ けっこう、知ってますね。
── ナンドさんのモチーフは、
何を表現されてると思います?
ウレシカ 緑はたぶん、サッカーフィールドで、
かつ、ブラジルのカラー。
この「手」のモチーフは
最近、ナンドさんがよく使うものです。
操り人形って、あるじゃないですか。
誰がコントロール権を握っているんだろう?
って、そういう意味なのかもしれない。
田中 ああ、なるほどね。
ウレシカ ブラジルは「サッカー強国」という
イメージがありますけど、
そのブラジルカラーを用いながらも、
「ほんとうは、誰がいちばん強いの?」とか、
「誰がブラジルサッカーをコントロールしてるの?」
「サッカーがブラジルをコントロールしてるのか?」
‥‥そんな、さまざま意味をこめて、
こういうデザインにしたのかもしれないですね。
西田 しかし、Tシャツひとつで、
こんなに語る機会って、
なかなかないですよね(笑)。
田中 永遠に語れそう(笑)。
── 韓国のミミ・ソンさんは、「心」と
韓国語で描いてらっしゃいます。
ウレシカ この場合の「心」は、「私の国」
くらいのニュアンスなんでしょうか。
ミミさんは、すごくパワフルで元気な女性。
つい最近、赤ちゃんが生まれたそうで、
だからたぶん、ハートも描かれている。
大橋歩さんのTシャツは、
私にはちょっとわからないんですけど‥‥。
── 日本の「波」と「太陽」ですね。
そして、背中には「富士山」。
田中 日本のシンボルをモチーフにしているから、
日本人には、たぶんすごくよくわかる(笑)。
ウレシカ ああ! なるほどね。
── たぶん、自分の国のTシャツは、
すぐわかるんでしょうね。
ハーマンズトラさんのTシャツも
解説がほしいところですが。
ウレシカ 彼は、ドイツの軍服なんかを作っていた
ファッションデザイナーです。
軍服作りを実際に学んだという経歴を持っていて、
すごくクレイジーな洋服を作るかたですね。
西田 これ、赤ちゃんですか?
ウレシカ そうそう。
クラッシュテストダミーの赤ちゃん。
西田 ああ、衝突実験のね、自動車の。
ちょっと、グロテスクな‥‥。
あ、これ、よく見ると
シートベルトをしてるみたいですね。
ウレシカ 南ドイツで生まれて、ロンドンで勉強して‥‥。
いろんな国で活躍しているデザイナーで
国籍も複雑なんですが、とても
自由でアグレッシブなデザインをしますよね。
── それは、いろんな国で暮らしたという経験が
活かされているんでしょうか?
ウレシカ 常にそうだとは言いきれないと思います。
クラインダイサムアーキテクツのTシャツには、
「Let’s foreign」と書いてありますけど、
これは、彼ら自身が、
日本に本拠地を置く自分たちのことも含めて、
ジョークにしてるという感じですね。
西田 これ、どういう意味にとればいいんですか?
「外国人でいよう」っていう意味?
「外国へ行こう」っていう意味?
ウレシカ ちょっと微妙ですね。
「Let’s」が、正しい文法で使われてない。
── Tシャツ背中のプリントで、
答えらしいことがわかるんですが、
カタカナで「ガイジン上等!!!」、と。
西田 やっぱり!
そんなニュアンスだよね。
── それと、モチーフが
抹茶をたてる道具と、イギリスのティーカップ。
それで、「ティー」シャツ、という(笑)。
田中 Tea-シャツ、なんだ(笑)。
ウレシカ 言葉の遊びですよね。
でも、ウスマンさんのTシャツなんて、
見ためだけで国籍を当てるのは
難しいと思いますよ。
── あと、カム・タンさんなんかのも。
田中 これは、かわいいですよね。
ウレシカ ね、かわいい。
オーデッドさんのデザインなんかも、
ほんとうにおもしろい。
ヘブライ文字って、あんまり見かけないし、
文字自体がすごく実験的なので、
実際には読めないんじゃないかと思うんですけれど。
── オーデッドさんは、
立体物なども手がけていますよね。
ウレシカ はい。
このタイポグラフィのかたちを3Dにして、
それがなおかつ、虫に見えるようなオブジェを
作ったりとかしているんですよ。
本国のイスラエルでは、かなりの有名人です。
西田 いま、ひとつひとつを眺めて感じたんですが、
今回のTシャツ、「ほぼ日」でやるにしては
ものすごくデザインが「とがって」ますよね。
これ、ほんとに「ほぼ日」なのかな? って。
でも、だからこそ、おもしろいんです。
こういうところに、乗り出してきたんだ、という。
── やはり、いろんなフィールドで
活躍されているかたがたなので、
いわゆるTシャツ然としたTシャツ、って
あまり出てきてないですよね。
西田 その点、やはりいちばん大きいなと思うのは、
さきほども言ったように、
境界線が曖昧になってきていることですよね。
デザインさえしっかりしていれば、
たとえば「Tシャツ」という束ねかたをしたときにも、
さまざまな肩書きの人たちが、
一カ所に集まることができる。
田中 そして、
デザイナーのことをあまり知らなくても
純粋に「これがいい!」と思って
手にとってしまうことのできるのが、T-1ですしね。
西田 T-1のシステムが、
それを成立させているんですよ。
ちゃんと、続けていける。
ヘンな言い方ですけど、商売にならなければ
やってはいけないと思うんです。
歌って盛りあがって終わり、じゃダメ。
作った人にも、きちんとインセンティブを払って、
買った人にも満足をあたえることができて‥‥。
ウレシカ とくに、優勝したTシャツを買った人には
いちばんになった喜びみたいな、
ちょっとしたギャンブル性もありますしね。
西田 だから、大切なのはシステムなんだね、さすがだな、
というのが、僕の結論。

それなのに、デザイン的に
「とがった」ことをやれる人間を
これだけ集められている。

その点が、すごいなと思います。

<続きます>

2006/6/19 月曜日

世界48カ所の「T-1ミュージアム」が決定!

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T-1のTシャツを1枚、展示してください!
という「T-1ミュージアム 館長募集」の呼びかけに
答えてくださったみなさん、
ほんとうにありがとうございました!

このたび、世界の48カ所
「T-1ミュージアム」が開館することに
決定いたしました!

原宿のインテリアショップから、
京都のパン屋さん、
薬局、旅館、カフェや企業のショーウインドウ、
さらには四国のお寺、北関東の居酒屋まで!

くわえて地域も、日本各地のみならず、
ニューヨーク、ロンドン、エジンバラ、上海
という海外4カ所でも、T-1のTシャツを、
実際に、間近で見ることができるのです!

たとえば、こんなところがT-1ミュージアムに!

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hhstyle.com原宿本店(東京都渋谷区

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馬力屋(静岡県賀茂郡

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毎日沖縄毎沖カフェ(沖縄県沖縄市

そもそも、お店など一般に公開されている場所が
ほとんどですから、Tシャツを眺めながら、
ミュージアム自体の雰囲気を楽しむのもよし、
あるいは、各デザインによってそれぞれちがう、
プリントやインクの特徴など、
Tシャツのディテールチェックに入るもよし!、

各ミュージアムの
具体的な開館期間や場所については
のちほどまた、発表いたしますが、
まずは、こちらのページを見て頂けますと、
全48カ所のミュージアムのおおまかな所在地を
一覧することができます。

近所のお知り合いのお店が、あったりして!?
幸運にも、近くにミュージアムがあったら、
開館期間中にぜひ、遊びに行ってみてくださいね!

また、展示のようすに関しても、
各ミュージアムの館長さんから
レポートが届きしだい、
随時、ホームページ上で公開していきます。

お楽しみに!

2006/6/19 月曜日

箭内道彦さんの「オレココT」制作秘話!

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みなさんからのファースト・インプレッションでも
支持率の高い、箭内道彦さんの「オレココT」

今回は、この人気Tシャツができ上がるまでの
ちょっとしたエピソードを、お届けいたしましょう。

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初のT-1参加となる箭内さん。
他の多くのデザイナーさんと同じく
ご自身の会社「風とロック」でも
オリジナルのTシャツを作っておられます。

今回のT-1ワールドカップに参戦するにあたり、
当初は、それらのオリジナルTシャツとも、
現在のT-1のTシャツ「オレココT」とも、
まったくちがうデザインをしておられました。

赤で胸に「JAPAN」、背中に「NIPPON」、
そして袖には、日の丸の旗。
すべての国際大会で日本を応援できるTシャツ。

当初、T-1ワールドカップ事務局には、
こんな感じのデザインが、届いていたのです。

yanai_raf.jpg

いやー、かっこいいですね、箭内さん!
おっしゃるとおり、サッカーや野球の国際大会で
日本の応援団が、みんなこのTシャツを着ていたら
ほんとうに壮観でしょうねー!!

‥‥ところが、
デザインのデータをいただいて、数日たったある日。
事務所のかたから、こんなメールが‥‥。

mail
Tシャツ新案‥‥。

お世話になっております。
箭内からTシャツのデザインの
新案についての、ご相談です。
休暇中にきっと家でテレビを見ていて
思いついてしまったんだと思います。。。

ちょうど左胸の位置に日本があり、
ワールドカップなど
世界中の方があつまる試合の観戦に行った日本人が、
オレここ、と親指で指せると。

で、そこで出会ったいろんな国の人達が、
それぞれ、オレここ、オレこっち、という仕掛け
(というほででもありませんが)になっております。

大変恐縮ですが、
なにとぞご検討いただけませんでしょうか??

よろしくお願いいたします。
mail

い、いえいえ、
そこまで恐縮なさらなくても!
まだ、だ、大丈夫です!

ぎ、ぎ、ぎりぎりですが、
ま、間に合います!
間に合わせます!!

‥‥ということで、急きょ、Tシャツは、
現在のデザインへと変更となったのでした。

その後、サンプルをつくる過程で
インクを蓄光インク
(日光や電気の光を蓄積して暗闇で光るインク)に
するアイディアなども飛び出し、
こうして、箭内さんのTシャツは
最終的に、現在のデザインとなり、
人気の「オレココT」が生まれた、というわけなのです。

それからまた、数日後。
事務局スタッフは、Tシャツのサンプルを手に
箭内さんのオフィスを訪問しました。

プリントの仕上がりから
蓄光インクの光りぐあいまでチェックした
箭内さんから、ひと言。

「紫のインクもきれいにでてるし、
ちゃんと光るねー、おもしろい!」

0619_yanai_web.jpg
胸の位置にある日本を「オレココ」と指さす箭内さん。

Question&Answer でも、
「とつぜん、コミュニケーションの
きっかけになれるようなTシャツが作りたくなった」

と、答えておられましたが、
きっと、いつも「コミュニケーション」について
考えておられるのではないかなーと、
箭内さんの丁寧でやさしいお話ぶりから感じられました。

国際交流の
きっかけになるようなTシャツ、「オレココT」。

ぜひぜひ、みなさん、チェックしてみてくださいね!

2006/6/19 月曜日 « 前のページ次のページ »