雑誌『ダ・ヴィンチ』の7月号を見ていたら、
むむ? むむむむむ?
インタビュー記事のなかで、
作家の乙一さんが着ている、このTシャツ‥‥?
昨年の第1回T-1ワールドカップの
祖父江慎さんの「アカハラTシャツ」じゃないか!!
なぜ、乙一さんが「アカハラT」を!?
われわれ取材班は、ことの真相をうかがうべく、
すぐさま乙一さんにお話をうかがった!
取材の途中からは、
Tシャツを作った当人・祖父江さんも合流し
お話は今年のT-1ワールドカップへ‥‥。
作家の「詩的な言葉」と、
装丁家の「ひらめきの言葉」が交錯しあう
絶妙なやりとりを、存分にお楽しみください!
── |
まず、どうしてインタビュー取材のときに
祖父江さんのTシャツを着てらしたのか、
おうかがいできればと。 |
乙一 |
T-1ワールドカップのことは
ぜんぜん知らなかったんですけど、
知り合いのライターさんが
『Invitation』という雑誌で
昨年の第1回T-1の記事を書いていて‥‥。
その人からサイトを教えてもらったんです。 |
── |
ほう、ほう。 |
乙一 |
そのなかで目についたのが、
祖父江さんの、
耳の中のぐるぐるの‥‥ |
── |
サンハンちゃんのTシャツですね! |
乙一 |
はい。あのTシャツに、
なぜか、すごく惹かれたんですよ。
そこで、サンハンちゃんのTシャツと、
優勝されたトムさんの
水色のTシャツ(TOM-2006-iPod)の
2枚を買ったんです。 |
── |
あ、そうでしたか! |
乙一 |
そして、先日発売された
僕の『銃とチョコレート』の装丁を
祖父江さんが担当してくださるということで、
打ち合わせにサンハンちゃんを着ていったら、
「じゃー、これあげますよ」って、
アカハラのTシャツを頂いたんです。
だから、今後『銃とチョコレート』の
取材を受けるときは
アカハラTを着ていこう、と決めてたんです。 |
── |
なるほど!
それでナゾが解けましたよ!
でも、サンハンちゃんのTシャツを
購入されたとき、
まだ祖父江さんご本人とは
面識がなかったんですよね? |
乙一 |
ええ、そうなんです。
もちろん、お名前は存じ上げていたのですが‥‥。
実際にお会いしてみたら、
やさしい表情のかただなあ、と。
有名なかたですし、打ち合わせの前は
ちょっとびくびくしていたんですど、
怖くないかたで、よかったです(笑)。 |
── |
ははははは!
‥‥というか、むしろ
すごくたのしいかたですよね? |
乙一 |
そうですね、ええ(笑)。 |
── |
ところで、
サンハンちゃんのTシャツに
ひかれた理由は、どうしてなんでしょう? |
乙一 |
そうですね‥‥。
「異様」な感じがしたから、かな。
はじめて見たときは、
カタツムリのイラストかと思ったんです。
でも、Tシャツのコンセプトが
「i-Podに合うTシャツ」ということを知って、
ああ、そういうことか‥‥と。
リアルな感じの絵柄と、さわやかな色合いが、
妙な取り合わせで、おもしろいなと思いました。 |
── |
サンハンちゃんのTシャツは
4色刷りなんですけれど、
版の角度を、それぞれ
90°、60°、45°‥‥というふうに重ねて、
あの色あいができているんです。
プリントの工場の職人さんにも、
刷り上げてみるまで、デザインの全体像が見えない。
本の装丁をなさってますから、
印刷の知識を存分に活かしているんですよね。 |
乙一 |
アカハラTも、ホームページで見たときは、
まさかここまで凝っているとは思わなくて‥‥。
現物を見ると、表面がぼこぼこしていたり、
すごいつくり込みようですよね。 |
── |
そのぼこぼこの部分は、
シャンプーかなにかの泡を
スキャニングしたらしいですよ。 |
乙一 |
へぇ、おもしろいですね! |
── |
だから、リアルな泡に見えるんですよね。 |
乙一 |
スキャナーに泡を載せるんだ‥‥。
なるほど、なるほど。 |
── |
セミの抜け殻を
たくさんスキャンしていた、という
目撃情報もあります。 |
乙一 |
ええっ! それもまた、すごい‥‥。
でも、このアカハラT、
着ていると、トカゲのおなかの模様が
自分のおなかに付いているようで、
どこかの部族の風習みたいな‥‥。
これを着て夜中にジョギングしていると、
自分がトカゲになって
街を走ってる感じがしてくるんです! |
── |
ははははは!
でも、そんなTシャツをつくった祖父江さんと、
今回お仕事をされたわけですが、
どんな感想をお持ちになりましたか? |
乙一 |
とにかく、こだわりがすごいんです。
『銃とチョコレート』の装丁を見たとき、
高級チョコレートのパッケージみたいだなって。
インテリアになりそうなくらいの仕上がりだったので、
ほんとうにびっくりしたし、うれしかったです。 |
乙一さん著『銃とチョコレート』(講談社)
── |
打ち合わせのときには、
こんなふうにしてほしい、とか
コンセプトを伝えたりするんですか? |
乙一 |
いや、今回は伝えませんでした。
挿絵を描いてくださる
イラストレーターのかたに、
挿絵のテイストの希望は伝えていたので、
僕の文章と、あがってきた挿絵を見て、
祖父江さんがこのような
デザインにされたんだと思います。 |
── |
装丁の世界での第一人者が、
Tシャツもつくってしまう‥‥。 |
乙一 |
ほんとうに、ふり幅の広いかたですよね。
それにしても、
セミの抜け殻ってのはすごいですね‥‥。 |
── |
今回のT-1ワールドカップには
24組のデザイナーが参加しているんですが、
ズバリ、乙一さんの優勝予想を教えてください! |
乙一 |
そうですね‥‥。
この、タイポグラフィーのTシャツは、
すごく気になりますよね。
‥‥佐藤卓さんの「104.5°」って
何の数字なんですか?
地軸の傾きの角度かな? |
── |
いや‥‥そのナゾについては、
ぜひ、ご自身でお調べい頂きたいのですが、
僕たちにとって、非常に重要な角度なんです。 |
乙一 |
へぇ、そうなんですか。
気になるなぁ‥‥。 |
── |
ちなみに祖父江さんのTシャツ、
いかがでしょう? |
乙一 |
そうですね、今度のTシャツは
「和の漆器」みたいだなと思いました。
すごくシックで、かっこいいですよね! |
祖父江 |
いやあ、どうもどうも! |
── |
あ、祖父江さんだ! |
祖父江 |
遅れてしまって、すいません!
乙一さん、お久しぶりです。 |
乙一 |
お久しぶりです!
今回は、ほんとうに
ありがとうございました! |
── |
あ、祖父江さん
サンハンちゃんを着てきて
くださったのですね! |
乙一 |
かぶらなくてよかった!(笑) |
祖父江 |
かぶったとき用に、
アカハラTシャツも持ってきてます! |
一同 |
すごい! さすが!! |
── |
乙一さんは、
祖父江さんのTシャツを着ていると
まわりのみんなに褒められるそうですよ。 |
乙一 |
やっぱり目立ちますからね。
それに、ふだんは
計算で小説を書くタイプなんですけど、
祖父江さんのTシャツを着ていると、
野生的というか、動物的な感じで
文章を書けるような気がするんです。 |
祖父江 |
やっぱり「動物」な感じですよねー。 |
乙一 |
爬虫類のおなかを
自分のおなかにくっつけてるっていう‥‥。
部族が狩りに出かけるとき、
身体にペインティングするような。
自分がトカゲになった感じです。 |
祖父江 |
乙一さん‥‥。
でも、ちょっとだけ正確に言うとイモリなの。
両生類のアカハライモリですよー!! |
一同 |
ははははは。 |
── |
いま、乙一さんと
今年の祖父江さんのTシャツは
シックでかっこよく着れそうだねって
話していたんですよ! |
乙一 |
かっこいいです。
「宇宙」みたいです。 |
祖父江 |
ありがとうございます!
前回は、ちょっと
テンション高いTシャツだったので、
今回のテーマは、「鎮魂Tシャツ」。
これなら、たくさんの人に
着てもらえるんじゃないかなと
思って作ったんですよ。 |
── |
祖父江さんは、
今回のT-1で優勝するTシャツは
どれだと思いますか? |
祖父江 |
もちろん僕!
‥‥でも僕以外だったら、これかなあ。
(と、佐藤可士和さんのJPNAAを指す)
でも、やっぱり僕のだって思っておきたいぞ! |
── |
それでは、読者に
祖父江さんおすすめの
Tシャツを教えてください。 |
祖父江 |
そうですね‥‥。
んーと、買うんだったらこれ(Blue Baby)!
これはすごい、カックイー!
でもぜひ、僕のTシャツも! |
── |
わかりました!
それじゃあもう
祖父江さんご自身のTシャツについて
思う存分にアピールしてくださいよ! |
祖父江 |
よーし、まず、黒いよ!! |
一同 |
ははははは! |
祖父江 |
このまぶしい黒ったら、ないんですから。
ラインは夜のプールなんです。
キラキラしてるでしょ?
ボールペンで一気に描いたんですよ。 |
乙一 |
近くで見ると、すごいですね。 |
祖父江 |
このTシャツのいいところは、
パーティーでも可だし、
お葬式チックなところでも
なんだかOKな感じ! |
── |
お葬式‥‥チック‥‥?? |
祖父江 |
Tシャツって、
まわりの人とのコミュニケーションが
ベースだったりするじゃないですか。
「わたしって、こんな人です!」みたいなね。
でも、この「sleeping fish」は
ちょっと違うんです。
「自分自身との会話」っていう、
かくれテーマも、あるんですよ。 |
乙一 |
ああ‥‥そうなんですか。
「静かな感じ」が、しますものね。 |
祖父江 |
でしょ、でしょ。
まばたきすることのない
金魚の見た夢、なんです。
小さな金魚鉢ではなく、
広く深いプールで
静かに眠る夢のTシャツ。
そんな、ゆったりとした時間を
過ごすためのすみ家に、
からだごとなっちゃうんです。 |
── |
ふん、ふん。 |
祖父江 |
これを着たとたん、自分が
まるごとプールになったイメージ。
2匹の金魚が静かに眠っているから、
波立たないように、
静かに行動するのが、似合うんですよ。
だから、自分自身との
コミュニケーション時間を
大切にしたいようなときや、
風の音とかを感じたいときなんかに
バッチリなんです。 |
乙一 |
自分がプールになった感じ、という
その考えかたが、すごいなぁ。
かっこいいですよね、「死の気配」というか。 |
祖父江 |
でしょ、でしょ。
「死」があるからこその
「生」って感じなんですよ〜!
ちなみに、背中の小さなタグの中にいる
赤い金魚が見てる夢なの。
いいよー。ゆったりするよー。
ぜひ、着てみてね!
|
── |
わかりました!(笑)
がぜん、結果が楽しみになってきました。
どうもありがとうございました! |
なるほど、なるほど。
ことの真相は、そういうことだったのですね。
今後も、乙一さんが
インタビューを受けるときには、
着ているTシャツにも注目してみましょう!
なお、祖父江さんが装丁をされた
乙一さんの最新著『銃とチョコレート』は
ただいま、全国の書店にて絶賛発売中です。
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それでは、おふたかた、
ほんとうにありがとうございましたー!
2006/6/28 水曜日
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