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青木 |
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僕は今回、Tシャツを
完成した形で出そうと思っていなくて、
あえてぬり絵ができるようなスミ一色の線画にしたり、
ラフスケッチのような状態にしました。
絵って、完成されていると
ツッコミどころがなくなってしまうでしょう。
色が入っていなかったり
完成されてないことで、
ツッコミやすくつくったつもりでいます。
ですから、買ってくださったみなさんそれぞれが、
自分なりに、「適当に」、
何かの気分を思ってもらえるとうれしいです。
あまり「これです!」というかたちで
コンセプトを押し出していないので、
着てくださる方に、その人なりにとらえてもらって、
ツッコんでもらえればいいかな。
ぬり絵にしてくれちゃっても、ぜんぜんかまわない。
iPodのほうのTシャツは、ラフっぽいから、
自分でちょろっと描き足しても
問題はないですし(笑)。
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糸井 |
T-1で出すTシャツを
自分の仕事にリンクさせていこうと思ったのは、
どうして?
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青木 |
いちばんの決め手は
「iPodに似合うことをテーマとした
Tシャツをつくってくれ」
と言われたことです。
iPodバージョンがあるんだと知ったときに
いまやっている自分の仕事と、
かなりリンクするなあ、と思ったんです。
「みんなが着たいTシャツ」のほうに
プリントしたクマは、
コカ・コーラのキャラクタ−になっています。
コカ・コーラのキャンペーンで、
iPod shuffleをクマのおなかにセットして、
クマ全体がスピーカーになるという景品を
つくったんですよ。
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糸井 |
すごいリンクだね。
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青木 |
それに「iPodに似合うTシャツ」のほうは、
同じ絵の一部をglobeのアルバムで
使ったんですが、
これは小室哲哉さんがビートルズの
「アップル」と「マッキントッシュ」の(アップル)を
意識して、
ジャケットにリンゴのアイコンを入れてくださいと
おっしゃっていたんですよ。
これは、図らずもリンクしてる。
いま僕がやってることが、
ちょうど近いようなところにあったので
それをうまく使ってやるのがいいかな、と思ったんです。

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糸井 |
つまり、青木さんの考えるTシャツは、
時代のアイコンだよね。
それぞれの時代に、信仰の対象があって、
拝むべきものがあるんだから、
それをTシャツに使ったらいいじゃないか、
ということですね。
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青木 |
そのとおりです。
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糸井 |
そのモチーフがTシャツとして世に出ると、
さらにほかのところで露出しているものの
アイコン性も高まるから、
そうやって増殖されるわけだ。
青木さんは、ますます
プロデューサー化しているね。
デザイナーやディレクターというより、
いま、頭のなかで、先にやりたいのがそっちなんだね。
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青木 |
そうですね。
そもそもの「Tシャツ」というものの、
自分の考えとも近いのかもしれません。
これまでの、歴史あるTシャツも、
そのときの流行や話題の
アイコンになっていたと思うので。
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糸井 |
青木さんの話を聞いて、
なんだか「さっぽろ雪まつり」を思い出したよ。
「さっぽろ雪まつり」って、
雪像をつくるぶんには
何をモチーフにしたっていいわけですね。
「津軽雪んこ物語」みたいなものを一生懸命つくって
「いいのできたねぇ」なんて言ってても、いいんです。
でも、ポケモンの雪像をつくったとしたら、
メディアも一般の人も、
写真を撮りに来るんですよ。
お客さんたちは、やっぱり、
ポケモンのほうに行く。
青木さんの考え方からすると、
Tシャツは「さっぽろ雪まつり」なんだと、思いました。
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青木 |
そうですね、そういう
ポケモン的なものをできるだけ
使えたほうがいいなと思っています。
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糸井 |
そのTシャツを、翌年に見たときには、
「去年のTシャツはこうやって古びたんだな」
と、半端なビンテージを味わえるし。
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青木 |
そう考えると、
今回の僕のTシャツも、
「いまの話題のもの」でいいじゃん、
という話になるんですけど、
それは著作権の都合で使えないから(笑)、
自分の手の届く、使える範疇で考えて、
いちばんリンクできるものを選んだんです。
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糸井 |
今回のT-1の選手のなかで、
青木さんみたいな発想をする人は
完全に、いないと思う。
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青木 |
そうですか。
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糸井 |
でも、もしかしたらアッキィ(秋山具義さん)も、
そういう発想をすることが、稀にあるかもしれない。
年代のせいかな?
僕らの時代には、
そんな子たちはあんまりいなかったよ。
デザイナーの攻撃範囲が
プロデューサーという役も含んでるんですね。
でも、プロデューサーがデザインを
できるようになったという順序ではない。
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青木 |
デザイナーが
プロデューサー的なことを
かじってる、というかんじです。
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糸井 |
きっと青木さんはいま、
とてもおもしろい時期だと思うんだけど、
そういう発想をするようになってから
いちばん苦労したことは?
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青木 |
そうですね‥‥、おもしろいことを
考えることはできるんだけど、
それを具現化することは
すごくたいへんです。
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糸井 |
イベント会場をひとつ借りるにも、
「これくらいの広さあったら楽しいぞ」
なんて思っていても、
なかなか借りられないもんね。
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青木 |
借りたところで、それを楽しくするために
人を集められるかというと、そうじゃないし。
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糸井 |
青木さんのやっている、カミロボの巡業でも、
「この人数なら集められる!」という読みが
あるでしょう。
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青木 |
会場からみたら、たいした人数じゃないです。
今度は後楽園ホールでやるんですけど、
700人くらいでおさえといて、
いいとこ500人くらいでしょうか。
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糸井 |
でも、逆に言えば、
去年の青木さんは
500人を集められなかったと思うんです。
それはすごいことだよ。
それに、もうちょっと言いますと、
青木さんは10000人を集めることのできる
スポンサーと仕事をしていた人だから、
「自分は10000人集められる」と思っていた時代も
あるはずです。
でも、500人でも、すごいんだよ。
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青木 |
そうですね。
ちょっとでも増えるといいなと思います。
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糸井 |
増えるときは、ポンと増えるよ。
では、このTシャツは、
青木さんの感覚として、
何人集められるだろう?
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青木 |
ちょっとわかんないなぁ。
厳しいと思います。
1デザインあたり、50人〜100人だと、うれしいな。
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糸井 |
いま、すごい、
プロデューサーの顔になったね。
デザイナーだったら、もっと軽い気持ちで、
数字を言うよ。
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青木 |
ハハハハ。
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糸井 |
今回、こういう試みは、はじめてのことだから、
失敗するならすればいいと、恥をかいてしまえばいいと、
じつは思っています。
僕らがいま、やろうとしてることって、
どこからも「そんなのダメだよ」と言われると思うんだ。
そこを、犠牲になってくれる、
力のある人たちといっしょに、
第1回となるT-1ワールドカップを
やりたいと思ったんです。
また、これからもよろしくお願いします。
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青木 |
こちらこそ、よろしくお願いします。
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