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祖父江 |
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この、いろんな人が集まって
やるぞ、みたいなかんじになっているのは、
おもしろいですね。
ちょっと、たいへんなことになってますよね。
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糸井 |
たいへんなことになってますね(笑)。
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祖父江 |
このメンバーの名前が並ぶっていうことじたい、
あり得ないことなんじゃないかと思って
びっくりしました。
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糸井 |
あり得ないような人たちが、同じリングにのぼる。
それができるのは、
「Tシャツ」くらいしかないと思うんですよ。
この並びに、祖父江さんが入っていることからしても、
おかしいですよね。
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祖父江 |
ですよね。
なぜ僕が入っているんだろう、というふうに、
思いました。
いや、この並びに、ぜひ、いたいんですけれども、
いたいけどもほんとにいいのかな?
という気持ちが見えかくれしてしまいます。
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糸井 |
みんなそれぞれの人が
「なぜ僕が」と思っているんですよ。
ただ、全員がものすごく忙しい方ばかりですから、
無理かもしれないな、と思って声をかけたのですが、
引き受けてくださって、ありがとうございます。
祖父江さんが、これまで
Tシャツをおつくりになった経験は?
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祖父江 |
小学館の雑誌「スピリッツ」で
賞品用のTシャツをつくったことがあります。
ギャグマンガの賞を獲った人に、
恥ずかしくて着られないハデなTシャツを
送りつけようという企画だったんです。ふふふ。
誰が着ても、裾がおへそより上、
お乳の下ぐらいにくらいになるような、
ものすごく丈が短いTシャツなんです。
そして、二の腕のところがキュッとしまっていて
その先にフワッとフリルがありました。
左右の腕の部分には、白地に赤い
でかい水玉模様があって、
フリルが、何色だったか忘れたけど、
とてもきれいな色の太めのストライプで。
でね、その賞品用のTシャツのサンプルをもらって、
試着して仕事をしてみたら、すっごいやりにくいの。
袖口がやけに広がってるから、
ものを取るたびにいろんなとこにぶつかって
ガラガラガラっていろんなものを倒しちゃう。
フラメンコの人が仕事しているみたいになって、
消しゴムは落ちるし、鉛筆は転がるし。
それが僕の、
はじめてつくったTシャツです。
僕にとってTシャツは、
「着たくないもの」がスタートだったんですね。
今回の「みんなが着たい」というテーマとは、まるで逆。
それ以来、いくつかつくりましたが、
普通のTシャツはつくったことがないです。
ちゃんとふつうに着るためのTシャツは、
これが、はじめてのチャレンジです。
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糸井 |
祖父江さんは、本の装丁の世界では、
社会性の中に「セーフ」というかんじで
存在していらっしゃいます。
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祖父江 |
うん。けっこうセーフでしょ?
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糸井 |
変なことをしているとはいえ、
妙に印刷のことを考えたり、
本屋さんに置かれたときのことを
考えてくれてたりします。
今回のTシャツでは、どうだったのでしょうか。
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祖父江 |
うーんとね、男の子のTシャツって
あんまりいいのがないでしょう。
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糸井 |
祖父江さんは、昔から
「できたら女ものを着たい」と
言っていましたね。
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祖父江 |
そうそう。
男の子の服装って、
ストリート系かフォーマル系か、
そのくらいしかないような気がする。
選択の幅が、ちょっとしかないようなかんじがしません?
もっと女の子みたいに、
いろんな服があればいいのに。
男の子の服で、いいのがなかなかないから、
僕は、女子売り場で
いちばん大きいサイズを買ったりしています。
でも大きいサイズのってあんまりないから
同じ服ばっかり着ているうえに、
どれもこれも目立って記憶に残りやすいから、
着回してるのが、まるわかりなんです。ふふ。
「今回は、売れたものが優勝」というルールなんですが、
売れるもの、という方向で考えるのは難しいから、
それはやめて、
自分が着たいものにしようかなと思って。
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糸井 |
祖父江慎という人が着たいTシャツだったら、
みんな欲しくなるでしょうね。
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祖父江 |
だといいですね。
これが、今回のアシスタントの
アカハライモリちゃんでーす。
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糸井 |
イモリ‥‥みゆきちゃん、ですね。
アシスタントというか、
Tシャツの資料ですね。
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祖父江 |
いま僕は、なんだか生きもの系に
行っちゃってるとこなんですよ。
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糸井 |
あ! ちょっと、みゆきちゃん、
いま、危ないところにいたよ。
死の淵にいた。
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祖父江 |
乾きやすいから、あぶないよね。
(イモリを水槽に戻す)
お、いきいきと活動を再開しました。
あやうくみゆきちゃんがカワキものに
なっちゃうところでした。
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糸井 |
みゆきちゃんがしのぶちゃんになっちゃうね。
生きものは、やっぱりおもしろいですよね。
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祖父江 |
うん。売れる用Tシャツのテーマにしたのは、
このアカハライモリちゃんと、スズガエル。
スズガエルって、見た目は地味なんですよ。
(ふたりでカエルの図鑑を見ながら
熱心に解説しあう)
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糸井 |
産んだ卵を皮膚の下に埋めて歩く
カエルなら知ってるよ。
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祖父江 |
埋まったまま育って、
カエルになったら皮膚をやぶるように
ぽよぽよぽよ〜って出てくるやつでしょ。
あれは、すごい防御の方法だと思うんですよ。
誰が見ても触りたくないじゃん。
もしかしたら、おいしい卵かもしれないけど、
ちょっと嫌じゃん。
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糸井 |
あれが世界三大珍味だったら、
話は盛り上がるねぇ。
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祖父江 |
あとね、体に毒がある、ヤドクガエル。
この柄もTシャツの柄にまぜました。
背中にオタマジャクシ乗せて運ぶ人気者です。
あんなに堂々と、
かわいいとか言われながら、
平気でオタマしょえるのは毒がある証拠。
毒があるからできることだよね。
毒があるからできる自由な行動!
キャハハハハ。
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糸井 |
子どもをおとりにして
カウンターアタックを狙ってるんだね。
そういう物語が
このTシャツに乗っているわけです。
すばらしいです。
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祖父江 |
これはね、
勝負のときに、着てほしいです。
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糸井 |
みなさん、いま、祖父江さんは、声を変えましたよ。
吹き出しにして書きたいくらいです。
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祖父江 |
でもまあ、ふだんに着てもいいですけど。
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糸井 |
ふだんも勝負ですからね。
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祖父江 |
はい、ふだんが勝負の人に限り、
ふだん着てもいいです。
「おーい、ソブエー」とか、
「イトイー」とか、
うしろから呼ばれたとするでしょう。
「なにー?」と振り返ったときに、この
アカハラちゃん+スズガエルちゃん+ヤドクちゃんが
バーンと目に入るわけですよ。
アカハライモリがひっくり返ったときに
急に赤くてびっくりするのと同じで、
名前を呼んだ相手は、完全に驚きます。
人間なのに、強いよ、これは。
確実に、強くなれるTシャツなんです。
それに、まっ赤とペイルグレイピンクとで、
きれいでステキ。
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