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T-1出場者に糸井重里が訊く。
日本を代表する9人のデザイナーがT-1ワールドカップに集います。販売を前に、主宰者・糸井重里が出場者全員にお話をうかがいました。 ※今回は、佐藤可士和さんといっしょにデザインに携わったスタッフの石川耕さんに、ほぼ日刊イトイ新聞がお話をうかがいます。
佐藤 可士和(石川 耕)(前編) プロフィールを見る プロフィールを見る
佐藤 可士和(石川 耕)(前編)  
オンもオフも、デザインのことを考えています。

── 今回は、佐藤可士和さんといっしょに
T-1ワールドカップのTシャツをデザインされた
株式会社サムライのスタッフのおひとり、石川耕さんに
お話をうかがいます。
可士和さんは、今回のT-1には
どのように取り組まれたでしょうか。
 
石川 ふだんとそんなにはかわらなかったです。
というのも、ふだんのデザインの仕事、
たとえばシンボルマークをつくるときなどにも、
可士和さんは、
「それを着られるか?」
とか
「このマークがついたTシャツなら
 着て歩けるな」
ということを、よく言うんです。
つくっているのが企業のマークであったとしても、
客観的に見たときに、
その企業のシンボルとしてのみにとどまらず、
人目をひく魅力的なデザインになっているかどうかを
そういう言い方で例えているんだと、僕は思います。
すべての仕事にあてはまるわけではないんですが、
「それを着られるか」というのは、そういう意味なんです。
 
ですから、「Tシャツをつくる」ということが
いつもの仕事にくらべて
取り組み方に差があった、ということは全くありません。
あえて違いを言うなら、
結果がすぐに出るということでしょうか。
というのも、最近は期間の長いプロジェクトが多くて、
つくったものがすぐ世に出ることが少なかったんです。
それにくらべて今回のT-1は、
レスポンスが早い仕事ができる
いい機会だったと思います。
Tシャツというものは、特に、
スピード感が大事ですから。
 
── このT-1ワールドカップは、
審査員が不在で、
購入数で優勝が決まるというしくみなのですが。
 
石川 直接何かを売る、という経験は、
あまりなかったです。
つくったものがどういうふうにみんなの目に映るのか、
web上でどういうふうに見えるのか、
いったいどのくらい買ってもらえるのかが
おもしろくて、たのしくて、怖いです。
 
── 優勝、狙いたいですね。
 
石川 そうですね、ぜひ。
 
── ところで、今日は、
サムライの2フロアあるうちの
下階におじゃましています。
 
 
 
石川 ここは、サムライの
会議やプレゼンテーション用スペースであり、
また、作品の倉庫でもあります。
棚に、過去の作品と進行中の作品、そして資料を
ひとつずつ箱に入れて管理しているんです。
つまり、棚全体がサーバーで、
ひとつひとつの箱がフォルダ、という考え方です。
 

 
上の階の同じ場所には、
コンピュータの大きなサーバーがあって、
プロジェクトごとにデータが入っていて
データを引っ張れるようになっているんです。
 
── つまり、上がコンピュータのサーバーで、
下がその実体になっていて、
お互いがリンクしているということですね。
 
石川 そうなんです。
そして、このテーブルが
デスクトップ、というわけです。
 
── 全体的に、ものすごくキレイなオフィスなんですが、
たとえば、箱を整頓する担当者がいるのですか?
 
石川 いや、みんなでやっています。
可士和さんもしょっちゅう中身を
アップデートしますし。
 
── 佐藤可士和さんという方は、時代の寵児で、
先端を突っ走っているようなイメージを
勝手に持っているのですが、
近くにいらっしゃる石川さんが
これまでの可士和さんのお仕事について
感じられたことなどを、教えてください。
 
石川 以前、「M-ON!」という、
ケーブルテレビの音楽チャンネルのCIを
やったことがあるんです。
そのシンボルマークを考えているとき、
可士和さんは別の仕事で大阪に出張することになって、
出かける前に
「みんなそれぞれ考えておくように」
と言って出て行ったんです。
僕たちはすごくいっしょうけんめいやって、
300案くらい、バサッとつくって、
可士和さんが帰って来たら見せられるようにしよう、
と、そろえておいたんです。
 
可士和さんは、帰りの新幹線で思いついた案を
コースターの裏側にちっちゃく描いて
持って帰ってきました。
その案をクライアントに見せる形に整え、
ほかの案とまぜて、
全部いっぺんにプレゼンしたんです。
 
── たくさんの案を、
並列にプレゼンしたんですか?
 
石川 はい。全部の案を、
クライアントにひとつずつ説明しました。
「この仕事に関しては、
 あらゆる可能性を試してみたい」
と可士和さんは考えていたので、
とにかく考えられるアイデアは全部つくって
それをすべて持っていって提案しよう、
と言っていたんです。

でも結局、クライアントが選んだのは、
可士和さんがコースターの裏に描いた
アイデアだったんです。
そのときは、やっぱり、すごいな、と思いました。

プレゼンが終わって、「M-ON!」のマークが完成し、
いろんなメディアや街じゅうに
できあがったマークが出ているのを見て
やっぱりよくできているなぁ、としみじみ思いました。

まず、マークの色は、
Y100、C100、M100とスミで構成されているので、
絶対の再現性があるんです。
 
── 印刷インクの3原色ですから、
言ってみれば、校正いらず、ですね。
その「M-ON!」のロゴは、
このフロアにある、棚のフォルダのなかから
出すことができますか?
 
石川 できますよ。
 
── では、よーい、スタート。
 

 

 

 

 
‥‥‥‥25秒で出てきました。すごい。
このロゴは、ほんとうに
あちこちで拝見しますね。
 
石川 色は3原色で目立つし、
形は立方体を基準にしているので、
テレビ画面に収めてもパッと目に入るし、
動かしやすい。
名刺、ポスター、看板、CM、ウェブサイト、
どんなところに入っていっても
目立つし、飽きないし、
音楽のポジティブなかんじも出ているし、
かといって、クセも強すぎない。
 
可士和さんがこのアイデアのことを
コースターの裏を見せながら話してくれたときに、
「CMのときにパタパタまわったり
 パカッと開いたりして連動がしやすい」
というイメージを話していました。
僕たちは、あとあとしみじみ「すごいなぁ」と
思うんですけれども、
可士和さんには、最初からそれが見えているんです。
かなわないな、と思いました。
 
── 可士和さんは、どんな方ですか?
例えば、動物でいうと‥‥?
 
石川 うーん、動物では、いないです。
スピードが速く、切り替えが早く、
タイミングはのがさず、むだがない。
そういう動物がいるかもしれない、
とも考えてみたのですが、ちょっと‥‥難しいなぁ。
 
── 可士和さんは「デザイン」というものを
どういうふうにとらえていらっしゃるのでしょうか?
 
石川 可士和さんは、
「デザイン」とは「いろんな問題を解決するもの」
というふうに考えているので、
まずは問題点を整理し直して、
シンプルにしていくんです。
ですから、この事務所も、
仕事の効率を上げるためにも、
トラブルを未然に防ぐためにも、
整理整頓を大切にしているんです。
 
── ものごとの特徴、個性を
整頓して考えられていないと
さっきの「M-ON!」のシンボルは
出てこないですね。
可士和さんの仕事のやり方で特徴的なのは?
 
石川 僕がサムライに来て、
ほかのところと決定的に違うな、と思ったのは、
「ずっとデザインしていればいいというものじゃない」
ということでした。
よく、徹夜して会社に住んでるような人がえらい、
という感覚があるでしょう。
「俺はこんなにやっている」というふうに
アピールする人が多くて、
そういうもんなんだと、思っていたんです。
けれども、可士和さんは
「はじめから時間を決めて、
 ダラダラやらないようにしなさい」
と言う。
徹夜したり、土日に出勤したりすると
怒られるんですよ。
なるべく早く終わらせて、
次の日にちゃんと早く来るように、と
よく言われます。
 
そうすると、手を動かさないぶん、
家に帰ってからもいろんなことを
考えたりできるんです。
手を動かさないで思ったり考えたりしたことが
自分のデザインに、
いい方向に効いていったりするんです。
僕がこのサムライに入る前は、
可士和さんともうひとりのデザイナーと、ふたりで
すごい仕事をたくさんやっていたので
びっくりしたんです。
これは、帰る時間なんてないんじゃないか、
と思いました。
 
でも、オン、オフをはっきり分けて、
帰るときは帰る、というふうにしたほうがいい。
そういう考え方で、可士和さんはあの仕事量を
実際にやっているんです。
 
でも、オフとは言っても、
可士和さんはデザインのことを
それはそれは延々と考えていて(笑)、
外で何をやるにも、人と会うにも、
その状況を「デザイン」の目で見ているんです。
 
外に行っていろんなものを見ていても。
ずーっとデザインのことを考えているんです。
 
2005-09-19
  後編へつづく


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