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2005-10-09のNEWS!!

必見!Tシャツプリント工場の秘密!すべてのTシャツは手刷りでつくられていた!

Tシャツプリント工場の秘密

最初にずばり言っておきましょう。
今回エントリーされた18枚のTシャツは、
どれもこれも「Tシャツ職人泣かせ」なのです。
ひらたくいうと、かなり「こってる」のです。
 
え? 素材も綿100%で、
刺繍もボタンもポケットもないのに、
どこがこってるの?
 
そんなふうに感じる人のために、
今日はTシャツ工場潜入レポートをお届けします。
題して「Tシャツ工場の秘密」!
 
やってきましたのは、
北関東にある、とあるTシャツプリント工場。
ちょうど「T-1ワールドカップ」のために
サンプルTシャツをつくっているようです。
 
おっと、あの鮮やかな水色は
トムさんのTシャツですね。
それではさっそく
「TOM-2006-iPod」の制作過程を見学しましょう。
すいません、おじゃまします。お疲れさまです。
T-1の者です。ほぼ日です。お疲れさまです。
 

 
版台の上にプリント前のTシャツが並んでいます。
まな板の上の鯉ならぬ、
版台の上のトムさんTシャツとはこのことです。
 

 
デザインをもとにつくられた「版」がでてきました。
これをTシャツの上にのせて固定し、
インクをのせて刷るわけです。
 

 
よいしょ。のせて。固定して。
‥‥‥‥刷る!
 

 
それが乾いたら、別の版をとりだして、
よいしょ。のせて。固定して。
‥‥‥‥また刷る!
 
以上のようにして版を重ねること3回、
みるみるうちに「TOM-2006-iPod」が
できあがっていきます。
これがいわゆる
シルクスクリーンでのプリント工程になります。
わかりやすく工程をお見せしましょう。
 

 
はい、1版目。黒くて細い雨の模様。
ご覧になれますか? もっと近寄って。
 

 
続いて、2版目。キリンさんです。
首の長い動物です。
 

 
で、3版目。サル登場。
キリンさんの背中でたのしそうです。
 
というわけで前面プリントができたわけですが、
はっきりいって、ここまでは序の口。
Tシャツ職人さんを泣かせるのはこれからです。
トムさんのTシャツには、
サイドのところにプリントがあったじゃないですか。
 

 
そうそうそう、これこれ。
これのプリントがけっこうむつかしいんです。
なぜなら、前面と背面をまたいでいるうえ、
すその折り返し部分にもかかっているからです。
ひらたく言っちゃうと、
すんげぇ、ボコボコしてるところなんです。
そこに均一にプリントせねばならないのです。
 
さあ、どうしよう。
職人さんたちはつぎのような方法を用いました。
 

 
これ、なんだかわかりますか?
ええと、カンタンにいうと、
シートの上にインクをのせ、
そのうえに熱で溶けるノリを塗ってあります。
 

 
そのシートを、
このようにプレス機の上にのせます。
 

 
そんでもって、プレス! ジュッ!
そういう音が聞こえたような気がします。
数秒間このままお待ちください。
 

 
お見事! キレイ!
ボコボコしてるとこなのに、キレイ!
これは、いわゆるひとつの
アイロン転写プリントを応用した方法ですね。
職人さんたちは、この方法を
ホットメルトと呼んでいました。
ホットメルト!
なんだかおいしそうな名前です。
 
さあ、職人さんたちの苦労に
本格的に迫っていきましょう。
青木克憲さんの「AOKI-2006」の
制作過程を見ていきますよ。
 

 
昨日、プリントの種類の話をお伝えしましたが、
青木さんの「AOKI-2006」は、
厚盛プリントを用いています。
これは、ぼこぼこと立体的に
盛り上がっている高さのあるプリントで、
しかもその盛り上がった部分が
鋭角的になっているのがポイントです。
 
厚盛プリントは一般的にある手法ですから、
これをそのまま使うこと自体は苦労ではありません。
職人さんたちは、そんなことでは泣きません。
でもね、みなさん。聞いてください。
聞いてやってください。
ふつう、厚盛プリントを使うときは、
こんなに細い線は無理なんです!
だって、あんなに細い線を、
立体的に盛り上げたら、
インクがとれちゃうじゃないですか!
 
おまけに、今回のTシャツの生地は
とってもしなやかなんです。
なぜ、しなやかかというと、
繊維の毛足が長いからです。
超長綿っていう素材なんです。
 
これがどういうことかわかりますか?
インクをのせる部分が
繊維でフワフワしてるってことです。
 
つまり、「AOKI-2006」は、
フワフワの草原の上に、
ほっそーいビルを建てるようなものなのです。
よっ、青木さん! 職人泣かせ!
 
職人さんたちは泣きました。
泣きながら、試行錯誤しました。
(ほんとに、そうとう苦労されたそうです)
そして編み出されたのがこの方法です!
 
まず、版を2種類用意します!
‥‥え? 黒一色のTシャツなのに?
そう! 黒一色だけど、版はふたつ!
それはいったいどういうことでしょう。
 
ふたつの版の違いは、
インク部分の溝の深さです。
まあ、細かいことはいいんです。
まず、第一の版で、このようにするのです。
ご覧ください!
 

 
‥‥こらこら、真っ白やんけ。
いえ、よ〜く、見てください。
うすーく、線があるでしょう?
じつは、このインク、乾くと透明になるんです。
‥‥なんのためにこんなことを?
土台です! このプリントは、
本来の黒インクの土台のためものなのです!
 
述べたように、
いきなり高さのあるプリントを施すと、
インクがとれちゃうというか、
ようするにビルが倒れちゃうので、
それよりはやや高さの低いプリントを
土台として生地のうえにのせるのです。
 

 
しかも、長い繊維を寝かすために、
土台のためのプリントを
5回から6回もくり返します。
マジですか?! と思わず言ってしまいました。
 

 
じゃじゃじゃーん。
そして、こちらが、第二の版。
高さのあるプリントができます。
 

 
どりゃ! 喰らえ、黒インク!
そ〜っと、版をとってみると‥‥。
 

 
お見事! ブラボー!
ばっちり立体で極細の線!
 
どうですか。見ただけではなかなかわからない、
ひと手間、ひと工夫が加えられているでしょう?
ついでにお知らせしておきますが、
「AOKI-2006」は、工夫を重ねてはいますが、
それでも、一般のTシャツでは考えられない
細い線の厚盛プリントですから、
若干プリント部分が
とれやすくなる可能性があります。
どうぞ、ご理解くださいませ。
 
変わった方法でプリントされている
職人さん泣かせTシャツを、
もうふたつ、ご紹介いたしましょう。
まずはこちら!
 

 
襟首を、ぐるんと線が一周している
深澤直人さんの「FUKASAWA-2006」ですが、
シンプルなようでいて、
このプリントがなかなかむつかしいのです。
 
なぜだかおわかりですか?
そうそう、線が前面と背面にまたがっています。
しかもこのデザイン、
線がつながって見えなければ意味がありません。
職人さんたちはどうするかというと‥‥。
 

 
まずは、写真のように襟首を中心にして
Tシャツを版台の上に固定します。
あ、しまった!
これは、すでにプリントが終わってますね。
ええと、この状態で、
白いTシャツが置いてあると思ってください。
写真、撮り損ねました。すいません。
 

 
そして、ぐるっと一周する線の版の、
半分をテープでマスキング。
 

 
つまり、前面部分と背面部分、
2回に分けてプリントするわけですね。
襟首のでこぼこの影響で
インクがかすれたりしないように
小さいスキージ(刷毛)をつかって
首まわりに円を描くようにプリント。
このあたりはほんとうに繊細な作業です。
いやー、すごい!
 
さあ、最後にご紹介するのは、
特大サイズの版を使った佐藤卓さんのTシャツ。
このTシャツで職人さんたちを
一番悩ませたポイントは、
Tシャツの全面にプリントするゆえに
台に固定することができないということ。
袖の部分にもプリントがされていますから
Tシャツをただ、台の上に置いた状態で
バーンとプリントするしかないんですね。
 

 
さあ、もう、どうにでもしてくれ!
いえいえ、そんなに投げやりに
なっているわけじゃありませんよ?
 

 
どっせぇーーー! バーーン!
おらおらおら! 佐藤卓は男でぃ!
いえいえ、そんなに乱暴に
プリントしているわけじゃありませんよ?
 

 
おらーーーーっ! できあがりっ!
いえいえ、このTシャツ、
ここからがポイントなんですよ。
だって、まだ背面部分があるでしょう?
でも、とりあえず前面が乾くまで
待たなきゃいけないんですよ。
ということは、このTシャツ、
いったん台の上からどけたいんです。
でも‥‥ほら‥‥その‥‥
バーンとプリントしてあるから、
移動させることが、むつかしい‥‥。
 
そこで! 職人さんたちは、
すばらしい方法を編み出しました!
 

 
ふたりがかりで、はじっこのほうを、
そーっと持って移動させるのでした。
意外に人力でした。
 
さあ、「Tシャツ工場の秘密」、
いかがでしたか?
一見シンプルに見えるものでも
聞いてみないとわからない、
たいへんな工程を経てつくられているということが
おわかりいただけましたでしょうか。
 
そして驚くべき事実をもうひとつ!
なんと、この手作業のTシャツ生産、
サンプルだけではなく、
すべてのTシャツをこのようにして
つくるのだそうです!
つまり、あなたのお手元に届くTシャツも
このように手刷りでつくられるのです!
マジですか?! マジなのです!
 
Tシャツの違いは
「ボディの色とプリントデザインのみ」という
Tシャツ選手権、T-1ワールドカップ。
プリントの成否は、
勝敗を分ける重要なポイントとも言えますから
当然、プリント工場の職人さんにも気合いが入ります。
ほかにもまだまだお伝えしたい秘密があるのですが
Tシャツプリント職人さん達に
これ以上は、勘弁してくれと言われましたので
今回は、このへんでおしまいにします。
 
最後に、苦労しているTシャツ職人のみなさんに、
「18種類のなかで好きなTシャツは?」
と質問してみましたよ。
 

 
ふだん、Tシャツを飽きるほど見ている、
Tシャツづくりのプロが選んだのは
いったいどのTシャツでしょうか?
コメントとともにどうぞー。
 



INOUE-2006-iPod
 
「これまで数々のTシャツを見てきて
 デザイナーの気持ち、作り手の魂が
 もっとも感じられたのはこのTシャツ。
 ありそうなデザインだけど、
 実際にはこんなデザインはなかなかない。
 こんなTシャツ見つけるのたいへんなんですよ」
 



SOBUE-2006-iPod
 
「デザイナーの気迫が伝わってくる一枚。
 祖父江さんは、印刷のプロですから
 版を分けて入稿してこられたんですが
 色を重ねてみるまで、
 こんな雰囲気のTシャツになるって
 わからなかったんですよ。
 最後の色をのせると、
 全体の赤みが増す‥‥。
 買い物をする人ではなく、
 職人ならではの観点で選んだら
 これになるんじゃないですかね」
 



INOUE-2006
 
「シンプルなんだけど、全体のバランスが絶妙。
 TACO-SUNのタコの部分には、
 白のインクがのってるんですが
 白いボディに白いインクのせるって、
 たいへんなんですよ」
 



KASHIWA-2006
 
「やさしい色合いとか、好きだなぁ」
と、ある職人さんが言うと、隣にいた職人さんが
「この人、たぶん、つくったのが
 佐藤可士和さんだとか
 知らないで選んでるからね」
 


AKIYAMA-2006 AKIYAMA-2006-iPod
 
「4色分解で、チェックを表現するアイディア。
 こんな神経を使うプリントはないですよ。
 1色でも色の濃さが変わったら、
 全体のバランスが変わりますからね
 自分で刷らないなら、
 このTシャツがいいです(笑)」
 



2005-10-09

 


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