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青木克憲
秋山具義
井上嗣也
大橋歩
佐藤可士和
佐藤卓
祖父江慎
トム・ヴィンセント
深澤直人

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「宣伝会議」編集長 田中里沙さんに訊く。
2日後に控えたT-1ワールドカップの販売開始に向けて、この闘いの見どころを、雑誌「宣伝会議」編集長の田中里沙さんにうかがいます。
リングにあがる9人は、観客の評価をたのしみにしていますね。

田中里沙(たなか・りさ)
雑誌「宣伝会議」編集長。1966年三重県生まれ。1989年学習院大学卒業後、広告会社を経て1993年株式会社宣伝会議に入社。日本広報協会広報アドバイザー、全国広報コンクール審査委員、内閣府政府広報室「政府広報に関する評価委員会」委員なども務める。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍。

── 明後日から、T-1ワールドカップ
9名18作品が同時に販売開始されますが、
今日は雑誌「宣伝会議」の田中編集長に
見どころをおうかがいしたいと思います。
 
田中 よくこれだけのみなさんが顔を揃えましたね。
甲子園のようで、ほんとうにたのしみです。
この9人がTシャツに何を載せたのか、
メッセージなのか、デザインなのか、
興味があるところです。
しかも、自由演技と規定演技があるんですね。
 
── 「みんなが『着たい!』と思う」という
自由課題のようなテーマと、
「iPodに似合う」をテーマにしたもの、
2種類をデザインしていただきました。
 
田中 アーティストの自己表現を
単に出す場ではないんですね。
「みんなが『着たい!』と思う」ものを、
たとえば青木克憲さんの視点で見るとどうなるかが
わかって、すごくおもしろいと思います。
こういうテーマの出し方は、これまでなかったし、
糸井さんの観点はさすがにちがうな、
と思いました。
 
それに、投票を募って1位になったものだけを
商品化するのではなくて
はじめから全部販売して、その結果を競うわけですね。
 
 
 
── 最初からが勝負であり、しかも、
「みんなが身銭を切って、ほしいと思うものはどれか」
という土俵で闘うんです。
 
田中 そこも、いままであまり
なかったパターンだと思いますよ。
 
── では、出場者おひとりずつについて、
うかがっていきたいと思います。
アイウエオ順ですと、青木克憲 さんからですね。
 
田中 青木さんは、カミロボ展など、
いつもおもしろいことをされている方です。
キャラクターのプロデューサーという
イメージがあるので、
Tシャツにも、キャラクターを
載せてこられるだろうな、と思います。
 
青木さんは、立体的なキャラクター映像をつくったり、
建築を手がけたり、
とにかくいろんな表現方法を持っていらっしゃいます。
エンターテイメント性もある方ですし、
Tシャツというメディアに
青木さんが何をどう表現しようとしたのか、
すごく楽しみですよ。
 
青木さんのキャラクターは、ユニークなんですが、
いわゆる「キモかわいい」などではなくて、
男性女性問わず受け入れられる、
「王道」のところを出されるんです。
 
── 青木さんご自身は、第一印象は
こわいイメージがあります(笑)。
 
田中 コワモテで、声もハスキーだし(笑)。
男気があるから、パッと見たかんじは
ハードなイメージがあるかもしれませんが、
青木さんは、すごく健全で正当派です。
力強くデザインして、でも、出てくるものはやさしい。
そこが青木さん的で、私は好きです。
 
── なるほど。キャラクターというところは、
田中さん、あたっていますよ。
次に、秋山具義 さんについておうかがいします。
 
田中 具義さんも、欽ちゃん球団のロゴや
キャラクターデザインをなさっていますね。
一歩はずすと、「え?」となってしまうものが、
ぎりぎりのラインで、すごくオシャレになる。
たぶんそれは、具義さんの
洗練されたユーモア感覚がそうさせるんだと思います。
 
きれいなデザインというのは、
ほんとうはそんなに難しくないのかなと
私は思ったりするんです。
でも、ユーモアがあって、親しみがあって、
いとおしいと思わせてくれるデザインは、
なかなかできない。
そこのところを、具義さんはやっている。
 
── 秋山さんご自身も
ちょっとコワモテの第一印象ですが、
デザインは、たとえばエッチなものを扱っていても
いやな感じがしないし、広がりがあって、
やわらかい印象があります。
 
田中 おそらく、女性にも
すごく配慮をしているんだろうし、
嫌われないようなポイントを
よくついてらっしゃるんだろうなと思います。
 
具義さんのデザインは、全体的に、
ユニークでイキイキしていて、
時代感覚が、新しくも古くもなく、
いつも「アッキィ時間」になるんです。
「ほぼ日」のキャラクターのおサルも、
なつかしいといえばなつかしいし、
未来的といえば未来的でしょう。
独特の、すばらしい感性です。
 
── さて、次は、井上嗣也 さんです。
 
田中 嗣也さんは、あまり人前に出られない方です。
ですから、「大御所の、渋い人」という
イメージがあるんですよ。
 
嗣也さんのつくられるものは、
すごくたくさんの人に支持されています。
広告のデザイナーはもちろん、
建築をはじめ、いろんなクリエイティブに
携わっている人たちに
嗣也さんのファンがものすごく多いんですよ。
年上にも年下にも、ほんとうに幅広く尊敬されている。
 
 
 
── 業界内での井上さんの評判は
たしかにすごいですね。
 
田中 もしかしたら職人的なんでしょうか。
だから、ちょっとこわいイメージがあります(笑)。
 
── 青木、秋山、井上と、
ここまで3人全員コワモテですね。
 
田中 自分でプロモートしたり
個展を開いたり雑誌に出たりで、
いろんなことを発信される
デザイナーさんが増えてきているなかで、
嗣也さんは、どこにも露出しないで
これだけの支持を集めている。
ですから、世間での評判が
そうとういいんだと思いますよ。
嗣也さんは、タイポグラフィーに
昔から定評がありますので、
タイポグラフィーをきかせたようなものを
デザインされたのではないでしょうか。
 
── 2種類のTシャツとも、
文字と、ご自身の描かれた動物のイラストを
組み合わせてデザインしておられます。
嗣也さんは、お会いしたら、
すごくおもしろいおじさんでした(笑)。
ぜひ、糸井によるインタビューを見てみてください。
次は、紅一点の 大橋歩 さんです。
 
田中 大橋歩さんの描かれるイラストは、
まず、すごく、すごく、かわいいです。
大橋さんの雑誌「アルネ」に出てくる被写体は、
なんでもないものなのに、
かわいかったり、味わい深く見えます。
読者にそう思わせる秘密を
確実に大橋さんは持っている。
そこが大橋さんの偉大なる編集者としての力です。
私も編集者ですが
あそこまで行ける編集者は、なかなかいないと思います。
今回のTシャツも、見たことのないような、
いとおしいものを
出していらっしゃったんじゃないでしょうか。
 
なんでもないんだけど、なんだか気になるもの。
お店に入ったときに、自分につきまとって、
買っていいのかどうか迷いながら、
「でもこれ気になるのよね」というかんじで
買ってしまいそうなもの。
大橋さんのつくられるものは、
なんだかそういうかんじがします。

 
── 大橋さんも、大御所といえば「超」大御所ですね。
 
田中 嗣也さんよりもさらに大御所のイメージがありますね。
でも年齢不詳!
あのかわいらしさはすごいです。
 
── 大橋さんの、ピンクハウスの広告などを見ていて、
とんがった方のようなイメージを
お会いするまでは勝手に持っていたんですが。
 
田中 特別な世界をつくっていらっしゃる方なので
怖いのかな、厳しいのかな、
ちょっとでも変なことを言おうものなら怒られるのかな、
と、私も思っていました。
ですから、最初にお会いしたとき
慎重に言葉を選んで取材しましたよ。
でも、あのイラストどおりの、
やさしい方で、感動しました。
それに、とてもかわいい人なんですよね。
 
イラストはたまたま
ご自分の持っていらっしゃる能力であり
コミュニケーションツールのひとつというかんじがします。
エッセイもすごくすてきだし、
大橋さんは、いろんな広がりを持っている方です。
売れ筋を考えると、今回は、
大橋さんのポイントが高いかな、と思います。
クロワッサンの商品企画も、
ずっとやっていらっしゃるから、
どんなものが受け入れられるか、
世の中で何が支持されるかを、
肌感覚でわかっておられるでしょう。
 
今回の出場者に、大橋さんを入れられたところが
糸井さんの素敵なところですね。わくわくします。
 
── さて次は、佐藤可士和 さんです。
 
田中 可士和さんや具義さん、青木さんは、
私とほぼ同世代なんです。
少し前までは「若手」と言われたんですけど、
もういまや中堅になってきて、
活躍をしないわけにはいかない
世代になってきていますね。
 
可士和さんは、いろんなものに出会って、
新しいものをつくると次にまた進化する、というような、
すごいパワーを持った人だと思います。
ひとつのものをしあげると、
もう次のものが視野に入っていて、
「次はこれをやりたいな」と自分で公言すると、
ほんとうに声がかかって、実現する、
というかんじなんですよ。
 
Tシャツはパワーの源のようなところがあって、
どの服よりも活発にもなれるものだと思います。
そこに可士和さんのエネルギーを投入してくれると
すごくいいな。みんな着たくなると思います。
 
── 可士和さんは、クールでかっこいいし
すごいスピードで走っている、という印象があります。
 
田中 目立つ少年がそのまま大人になった、
というイメージがありますね。
ですから、みんなが応援します。
自信にいつも満ちあふれていて、パワーがあるから
縁起もののTシャツになるかもしれませんよ。
 
── あやかりたい「可士和パワーTシャツ」ですね。
つづいて 佐藤卓 さんですが、
卓さんは、手がけておられるデザインが
きちんとみんなが知っているもので、
「もう言うことなし!」という
完璧なイメージがあるのですが。
 
田中 卓さんは、首都大学東京のVIなども
やっていらっしゃいますね。
いつもポンと答えを出される方なんですが、
考え抜いてそこに至ったのが、きちんとわかるんです。
会合などにもご一緒したことがあったのですが、
そうとう理論派で、
デザインのコンサルティングのようなことを、
とくとくとクライアントのトップに向かって
話されていました。
すごいと思います。
著書の「デザインの解剖」も、
頭のキレるかんじがします。
でも、卓さんの趣味はサーフィンなんですよ。
 
── え!?
 
田中 意外ですよね。
いつもいつもいろんなことを考えていて、
すごくダイナミックなものを
感動するくらいコンパクトに、理路整然と収めるのが、
卓さんの芸風なのかな、と思います。
キシリトールガムのようなTシャツが出てくるのか、
あるいは、サーフィンのように
ご自分をさらけ出してくるのか、
どちらをTシャツになさったのか、楽しみですよ。
 
── ご自分では、
「商品を売るのは自信があるけど、
 自分を売るのは自信がない」
とおっしゃってました。
 
田中 卓さんはご自分でいつも、
「表現スタイルは持たない」という言い方を
なさっています。
ですから、おそらく広告の仕事がすごくお好きで、
クライアントあっての広告であり、
クライアントの課題を解決するために、
自分のクリエイティブを発揮する、
と考えていらっしゃると思うんです。
でも、今回はクライアントがお客さんだから、
卓さんなりに、
この短い期間にマーケティングリサーチをなさって、
Tシャツの解釈を出されたのかもしれないですね。
 
── 祖父江慎 さんは‥‥。
 
田中 祖父江慎さんのお仕事で何といっても有名なのは、
やはりブックデザインですね。
私自身は直接お会いしたことがないのですが
クマ語とか宇宙語とか、
不思議な文字をたくさん開発していらっしゃるとか‥‥?
 
── そうなんですか‥‥?
 
田中 祖父江さんは、人が考えないようなことを
いきなりやるところがあって
出版社的にはドキドキものらしいですね。
「いくらかかるんでしょう?」
と、全員が心のなかで思ってしまう
シーンがあるとか(笑)。
Tシャツも、もしかしたら、
制作費が高いものになったんじゃないかと(笑)。
 
 
 
── 「爬虫類の手ざわりを」とおっしゃって、
Tシャツのインクを
かなり選んでいらっしゃいました。
 
田中 「出版社も印刷会社も困る、本屋さんも置きづらい」
というような装丁をされる。
でも、買う人にとってはそれだけ
「気になる」ということですから。
 
── 力のある本だな、と思って手にとったら、
装丁は祖父江さんだった、ということが多いです。
 
田中 ほんとうに人気がある方ですよね。
祖父江さんの、
「こんなことできないか?」のひと言で、
印刷技術が進展している、という噂もあるくらい。
 
── たしかに、そうですね。
 
田中 技術者や現場の人と
クリエイターやマーケティングの人が議論することで、
新しいものは生まれますね。
「ええ? 何を言い出すか!」
というようなことが、
クリエイティブの進化につながっているんでしょう。
 
── 祖父江さんという人がひとりいらっしゃるだけで、
書店が変わっていくかもしれないし、
お客さんも変わっていくかもしれない。
今回のTシャツも
「祖父江さんのせいで!」という(笑)、
そんな現象が起こるかもしれないですね。
次は唯一のwebデザイナー、
トム・ヴィンセント さんです。
 
田中 トム・ヴィンセントさんは、
日本にいらっしゃって10年くらい経たれたでしょうか。
イメージソースの方だと知ってはいたんですが、
私は、直接面識はないんですよ。
たくさんいいお仕事をしてらっしゃいますし、
だいいち、ロンドン子が日本で仕事してるところが
とってもユニークですよ。
 
 
 
── 日本語がペラペラで
メールもバリバリに漢字でした。
 
田中 頭のいい、繊細なデザインをなさいますが、
イギリス的な、ものすごくクールで遠いイメージは
ないです。
いまはwebの世界で活躍なさっていますが、
ロンドンにいらっしゃるときは、
ドローイングをなさったり、
脚本も書いていらっしゃいました。
ですから、今回のT-1ワールドカップでも
webの無機質なイメージというよりも、
どのデザイナーより、どんな日本人より
親近感のあるデザインや、
インパクトが強いものを
出されたんじゃないでしょうか。
もしかしたら日本人以上に日本の感覚を
持ってるかもしれない。

 
── トムさんが、日本人が着たいものを、
感覚としてどういうふうに入れてきたのかが
気になりますね。
さて、最後は 深澤直人 さんです。
 
田中 深澤さんは、ずっとおつきあいがありながらも
お会いするチャンスがなくて、
またまた「気難しい方かもしれない」という
イメージを勝手に抱いていました(笑)。
でも、シンポジウムでご一緒させていただいて、
「ああ、まずいな」とドキドキしたんですけれども、
ほんとうにすごくいい方でした。
持っていらっしゃる雰囲気がすばらしくて、
驚きましたよ。
 
そのシンポジウムの時間が
ちょうど夕暮れどきだったんです。
夕暮れのなかに、広告の看板の電灯が
だんだんついていったんですけれども、
「こういう時間に目立つ色って、赤なんですよ」
と、説明してくださって、
ご自分の赤いデザインのプロダクトを
見せてくださったりしました。
すべての作品に、ストーリーがちゃんとあって、
ひとつひとつのものや、こと、時間、風景、
すべてに対して、愛情を注ぎ込んでいる人です。
だからああいういい作品が出てくるんだなと、
わかりました。
私には到底真似のできない日々のすごしかたを
なさっているんだな、と思いましたよ。
 
どういうものが
コミュニケーションをするデザインかを、
すごく考えてる方だと思います。
深澤さんは、Tシャツなんだけど、Tシャツじゃない、
Tシャツじゃないけど、Tシャツというような
そんなものを、考えてくれそうな気がします。
 
── 以上9名が出場する、今回のT-1ワールドカップは、
明後日(2005年10月5日)に販売開始です。
 
田中 リングにあがる人たちも、たのしいですね、きっと。
市場で、きびしい評価が待っていますが、
それだけ自分にも自信があって、
世のなかと関わりを持とうとする強いところが、
この9名のみなさんのすばらしさだな、と思います。
 
Tシャツというものは、
プリントされているものが
メッセージであっても、柄だったとしても
「この人がなぜこのTシャツを選んだんだろう」
と考えさせるものだと思います。
Yシャツやスーツなどは
「買わざるを得なかったのかな」という印象で、
自分の生活の戦略のようなものが
あまり見えないんですけど、
Tシャツは、それがわかると思います。
 
子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、
一枚のTシャツにまつわるエピソードを
それぞれみんなが持っていそうですよね。
 
市場の中で、どれがいまいいのか、ということを、
同時に見ながら販売するということは、
すごくおもしろいなと思います。
たのしみですね!
 
── 広告のプロの視点からの
貴重なお話をたくさん、
ありがとうございました!
 

2005-10-03




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