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T-1出場者に糸井重里が訊く。
日本を代表する9人のデザイナーがT-1ワールドカップに集います。販売を前に、主宰者・糸井重里が出場者全員にお話をうかがいました。
井上嗣也(後編) プロフィールを見る プロフィールを見る
ただ、見たいだけ。見ないと、目が乾くから。

糸井 今回はTシャツデザインの候補を
たくさんつくったと聞いたんだけど、
「こうしたい」というのが
途中からどんどん出てくるタイプだよね。
 
井上 そう、途中から生まれてくるわけよ。
例えばドングリの絵だったら、
じゃ、ドングリ転がろうか、
ドングリ焼こうか、と、なっちゃう。
だから、油絵なんかで
じっくりひとつのものを描く、
ということは、できない。
 
糸井 やったこと、ないの?
 
井上 そんなまじめじゃないもの、俺。
 
糸井 一回もやったことのない人って、
めずらしいよね。
 
井上 一生やらない、俺、一生やらない。
 
糸井 タコの絵は描いたんでしょ。
これ、「イラストは、誰?」って
言われると思うよ。
 
井上 そうだろうね。
(ボツになったスケッチを出して)
見てよ、このカスレがいいんだよね。でもボツなの。
一筆書きでね。でも顔が中途半端だよね。
顔をつくるのは、たいへんなんだよ。
 
糸井 出てくる、出てくる。
タコのデッサン、1000枚以上あるね。
ほんと、なに考えてんだろうね、この人は。
Tシャツになった1匹のタコのうしろに、
いったい何匹のタコがいたことか。
 
 
 
井上 だいたい、10秒以内に描いちゃうの。
 
描いてるうちに、
「ここがこうだと、もっと何かができるんじゃないか」
というふうになっちゃって、
またどんどん描いちゃうわけよ。
 
糸井 欲が出るんだ。
 
井上 出る。欲というより、
遊びたいんだよ。
 
これを考えているときにね、
タコが勝手に動き出したんだよ、音楽に合わせて。
また、それが、いいの。
クルクルってまわって踊るんだよ。
 
糸井 何の音楽?
 
井上 ビリー・ボーンの「波路はるかに」。
 
糸井 (音楽流れる)
ピラフのある喫茶店を感じるね。
 
井上 ピーマンがちょっぴり入ってる
ナポリタンだね。
 
タコのTシャツは、いいよ。
この音楽がかかったビーチでさ、
これ着て、頭悪そうに、
てかてかに灼けてさ。
 
糸井 タコのTシャツのグラフィックは、
立体的に見えるように
すごく細かい影がついているね。
 
 
 
井上 これは、やりすぎるとだめなんだよな。
でも、あるのとないのとぜんぜん違うんだよ。
 
糸井 自分では根気がない、って言うけど、
そういうふうには思えないね。
 
井上 根気というより、
こうなったらどうなるだろう、
見たい、見たい、となっちゃうわけよ。
アイデアが、もうキリないの。
 
糸井 タコ以外にも、
ボツになったデザインが山ほどあるんだね。
どれもいいね。
 
井上 こんなのは、まじめすぎてダメなんだよ。
みんな、欲しくない、欲しくない。
仕事のコンペだと出すけどさ、
Tシャツとして欲しいかというと、
そうでもないんだよ。
コンセプチュアルなんだよな。
ちょーっと、クサいわな。粋じゃないわな。
 
糸井 これもだめなの?
ちょっともったいないなあ。
 
 
 
井上 負けちゃうんだよなぁ。
何かにね。
 
糸井 なんだろうね?
ダンボール的なものに、かな。
 
井上 そうなのよ、ダンボールなものに負ける。
これ、T-1に出すには退屈なんだけど、
広告用だったらいいと思うんだな。
iPodにはまりすぎちゃったんだよね。
 
糸井 すごいねぇ。これを出さないところが、すごい!
ちょっと、本職を見せちゃったね。
 
井上 そう、そう、そう。恥ずかしいってかんじ。
 
糸井 ほとんどの試作に
ひとつひとつにこまかく顔を
乗せたんでしょう?
たいへんだね。
 
井上 たいへんじゃないよ、
がんばってできるものは、
ぜんぜんたいへんじゃない。
やればできるものは、
やればできるんだからね。
 
糸井 そうだね。
がんばればいいんだから。
 
井上 そう。がんばればいい。
 
いつも、行き当たりばったりよ。
とにかく、見たいのよ。俺。
この部屋にある、この写真もあの絵もかわいいでしょ。
とにかく、見たい、見たい。
目が乾くのよ、俺。
見ないと、目が乾く。
 
糸井 よかったねぇ。デザイナーになって。
 
井上 でも、俺って
デザイナーかどうかわからないじゃない。
 
糸井 あ、そうなの(笑)?
ただ、見てるんだ。
こうなったらどうかな、ああなったらどうかな、と。
 
井上 見たいだけ。
 
糸井 見たいのね。
井上嗣也は、見たいのね。
人生、短いもんね。
 
井上 短いよ。短いから、
とにかく遊びたいわけよ。
ダンボールかぶって、T-1でもやって(笑)。
だいたい、会社に来るのにも
いつも違う道を通ってるんだよ。
あっち行ったり、こっち行ったり、
違う古本屋に寄って。
同じ道は、もう、たまらないよ。
 
糸井 井上嗣也さんは、家出して
バイクで東京に来たんだよね。
「東京ってのは見えないからさ、
 東京タワーが目印なのよ」
って。あれは、ほんとなの?
 
井上 おもしろい話だね。
 
糸井 俺は、そのときから
東京タワーを見る目が変わったもの。
東京の地図を持っていない人でも
「どこだかわからないけど東京タワーがあるんだ」
と思ったら、来られるってことだよ(笑)。
ここにひとりいるということは
東京タワーを目印に東京に来た奴って、
いっぱいいるような気がする。
 
今回のTシャツは、
何人買ったかで優勝が決まるんですけども、
買った方々に、どんなふうに着て欲しい?
 
井上 好きに、好きに、好きに。
セクシーにね。
 
糸井 ふふ、そうだね。
ありがとうございました。
 
 
 
2005-09-26
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